ケンタッキーはクリスマスじゃなくて9月に注目!おもしろ施策まとめてみた

ケンタッキーといえばクリスマス?

みなさんはケンタッキーと聞いたとき、どんな言葉を一緒に連想しますか? もちろん一番は取り扱っている商品であるチキンでしょうが、「ケンタッキーといえばクリスマス」というイメージを持ってる人も多いのではないでしょうか?

参考 12月に頼らない「ケンタッキー」劇的回復のワケPRESIDENT Online

こちらの記事ではケンタッキーが、低価格ランチなどの施策で「特別な日の食べ物」であるというイメージの払拭に努め、業績を好転させたと指摘されています。ケンタッキーの売上がどれほど「特別な日」に集中しているかは、2018年は12月21から25日の5日間だけで年間の売上高の約6%を売り上げていたという数字からよくわかります。

竹内まりやの「すてきなホリデイ」が流れることでおなじみのケンタッキーのクリスマスCM。「日本のクリスマスは別にホリデイではないのでは?」という疑問はさておき、このCMの効果もあってクリスマスとケンタッキーの間にはイメージ的に強い結びつきがあるように思われます。

こちらは過去5年の「ケンタッキー」というワードの検索数の推移ですが、一目瞭然で各年12月に検索が集中していることがわかります。今年はそれ以外の月の検索数も全体として微増しているものの、やはりクリスマスが近づくにつれて検索が急増しつつあるのが見てとれます。

「ケンタッキーといえばクリスマス」。そのイメージが一般的なものだということはわかりました。しかし本当にそれだけなのでしょうか。ケンタッキーにはクリスマスしかないのでしょうか。

答えは否です。もちろんそんなことはありません。

というわけで今回は、みなさんの「ケンタッキーといえば○○」という方程式の「○○」の部分にクリスマス以外の何かを入れるべく、ケンタッキーが過去に繰り出してきた渾身のおもしろ施策をご紹介したいと思います。

ケンタッキーといえばキーボード?

参考 キーボードにチキン「KFCキーボード」 実用性ゼロでも強気withnews

少しさかのぼって2014年9月の施策です。ケンタッキーは創業者カーネル・サンダースの誕生日である9月9日を「カーネルズ・デー」と称して毎年何かしらの企画を行っています。大抵はチキンの無料プレゼントや割引といった「ありがち」なキャンペーンにとどまるのですが、この年は様子が違いました。

やることは単に特製グッズをプレゼントするだけなのですが、その内容がすごいのです。

  • 文字を刻印する代わりにチキンを立体化したものを埋め込んだキーボード(1名)
  • チキン型マウス(1名)
  • マウスとほぼ同じ大きさのチキン型USBメモリ(1名)
  • チキン型イヤリング(47名)

マウスとイヤリングはともかく、どれがどの文字のキーかわからないキーボードと巨大USBメモリはびっくりするほど実用性がありません。しかしデザインとしては、キーボードを彩る赤色はロゴなどに使われる色と同じものであるなど、非常に凝った作りのものになっています。

あくまで目で見て楽しむものということなのでしょうが、それにしてもインパクトのあるグッズのラインナップです。ちなみに上記は第一弾の景品で、第二弾では同じく巨大で実用性に欠けるチキン型iPhoneケースなども追加されました。

このプレゼント企画自体に話題性があるのはもちろんですが、このように当選報告のツイートでも一定のバズが発生しています。当選者を含め見た人が思わず他の人とシェアしたくなるようなグッズのプレゼントは、発表時と当選時で、一粒で二度おいしい施策と言えるかもしれません。

ケンタッキーといえば偽カーネル・サンダース?

参考 本物!?のKFC創業者カーネル・サンダースの登場で一同騒然!年に一度の「カーネル誕生祭」イベント「♯カーネルあらわる」事後レポートPR TIMES

こちらは2017年、やはりカーネル・サンダースの誕生月である9月に行われたイベントです。イベントの名前は「#カーネルあらわる」。その名の通り、カーネル・サンダースがお店に現れるというイベントです。

しかしカーネル・サンダースはとっくに亡くなっているわけで、当然やってくるのは本物ではありません。それでは、お店に現れたカーネル・サンダースは一体何者なのでしょうか。

その答えは、「ORマイスター」の笠原一樹さんです。

ORマイスターは日本のケンタッキーが独自に定めている制度です。ケンタッキーではオリジナルチキンへの理解度によって従業員をCからSまでの4ランクに区分しています。筆記試験と実技試験両方で満点を取るとSランクになることができ、従業員を指導するORマイスターはその中から選ばれます。現在ORマイスターは笠原さんを含めて2人のみです。

参考 日本に2人だけ、最高ランクの「ケンタ職人」 揚げたチキン88万本withnews

「#カーネルあらわる」では、その笠原さんに特殊メイクを施すことでカーネル・サンダースそっくりにし、店内で従業員のチキンの調理を指導したり、お客さんに名刺を配ったりしたということです。

似ている外国人を雇ったりするのではなく、あくまでオリジナルチキンの味を守る役割を果たしている社員に特殊メイクをするという手の込みよう。単なる話題性を効率的に追及したイベントではなく、いかに自分たちが真摯にフライドチキンと向き合っているかをアピールするための施策だといえるでしょう。

また、このようなイベントはカーネル・サンダースというケンタッキーブランドのアイコンの認知度やイメージの強化にもつながると考えられます。このカーネル・サンダースによるブランディングというテーマは次に紹介する施策にも関わってきます。

ケンタッキーといえば恋愛ゲーム?

まずは何も言わずにケンタッキーがYouTubeにアップロードしたこちらの動画をご覧いただきたいと思います。

参考 KFC | I Love You, Colonel Sanders! A Finger Lickin’ Good Dating Simulator | Available Now!YouTube

さぞ困惑されたことと思います。諸々の都合で動画をご覧いただけない方のために動画の内容を文字でお伝えすると「カラフルな背景にハートが飛び交う中若くて痩せているカーネル・サンダース他可愛い女の子や犬などのキャラクターが次々登場するアニメ」といった感じになるでしょうか。

これは何かと言うと、ケンタッキーが制作した「I Love You, Colonel Sanders! A Finger Lickin’ Good Dating Simulator」というゲームのプロモーションビデオ(PV)です。ファンによる創作ではありません。2019年のこれまた9月に公開された、ケンタッキー公式の施策です。

このゲームの内容を簡単に説明すると、「カーネル・サンダースと恋愛できるゲーム」です。

制作はPsyopというアメリカの会社で、ゲーム内で使われる言語は英語のみですがPVでは日本語も使われています。単純にその手のゲームっぽさを演出する装飾として日本語を使ったという可能性もありますが、日本の顧客にアプローチする意図も少なからずあるでしょう。ゲーム自体は日本からでもSteamというPCゲームの配信サイトで無料で入手できます。

参考 無料でケンタッキーの象徴であるカーネルおじさんと恋できる恋愛シミュレーションゲームが登場したので実際にプレイしてみたGigazine

どのようにゲームが進行していくかはこちらの記事で詳しく紹介されていますが、ざっくり言うと料理学校で学ぶ主人公がライバルたちとぶつかりながらカーネル・サンダースと仲を深めていくという展開になります。なぜか先生は犬のようですが、料理の学校なのに当たり前のように動物がウロウロしているどころか先生までやっているわけですから、もう意味がわかりません。

ちなみにゲームの配信サイトでのユーザーからの評価は、なんと約6000件中93%が好評とのことです。英語の勉強がてらプレイしてみてもいいかもしれませんね。

この施策はいわばチキンキーボードプレゼントと偽カーネルイベントのいいとこどりをしたものです。話題性の強い奇抜なアイテムでありながらゲーム内ではチキンの製法に関する説明もしており、さらにアイコンであるカーネル・サンダースの認知度強化にもつながっています。遊んでいるように見えて計算された施策でしょう。

ケンタッキーといえばチキン感謝祭?

ケンタッキーが毎年行っている「チキン感謝祭」をご存じですか? ご存じでなければチキン感謝祭がどのようなイベントか一度想像してみてください。

イメージできましたか? もし「日頃のご愛顧に感謝してチキンを安くする」といったようなイベントを想像したのなら、残念ながらそれは不正解です。チキン感謝祭はお店で行われるものではありません。神社で行われるイベントです。

Twitterではこんな目撃情報があります。力強い筆使いで書かれるカタカナの「チキン」にはなんとも言えない存在感がありますね。ケンタッキーのイメージカラーの鮮やかな赤色とはかけ離れた、まるでお葬式のような雰囲気です。

それもそのはず。ツイートの中でも指摘されている通り、チキン感謝祭の本質は食材となった鶏に感謝し供養するお葬式のようなものなのです。ケンタッキーの公式ホームページの、チキン感謝祭について説明している項目には以下のように書かれています。

参考 雑学あれこれ|「Q&A」よくあるご質問ケンタッキーフライドチキン

つまり、チキン感謝祭は「お客様に感謝してチキンを提供するお祭り」ではなく、そのままずばり「チキンに感謝し供養する祭事」であるということです。食材への贖罪ですね。

こういった活動を社会へのアピールのために大々的に行うのではなく知る人ぞ知る活動として行うことは、供養と感謝それ自体を目的とする、より真摯な行事としての印象を与えることにつながるのではないでしょうか。

昨今はヴィーガンを自認する人も増えており、動物を殺してその肉を食べるという行為は必ずしも当たり前の価値観ではなくなっています。アメリカのケンタッキーでは植物ベースの人工肉のテスト提供なども行われていますが、ケンタッキーが鶏肉の提供をやめる日は少なくともすぐにはこないでしょう。そういった中でこのような祭事を行うことは、企業イメージ向上の点で有効であると思われます。

まとめ

以上、ケンタッキーが主に9月のカーネル・サンダースの誕生月に行っている個性的な施策(チキン感謝祭は主に5月、6月の開催のようです)をご紹介しました。キャンペーンにおける実用的なアイテムやグッズの配布は確かに、集める人を選ばない分より多くの人を引きつけることができるかもしれません。しかしケンタッキーの施策からは、それだけが正解でないことが見えてきます。

実用的でない、ファン向けのアイテムをプレゼントすることはファンのロイヤルティの向上につながります。さらにそのアイテムが奇抜であれば、ファン以外の人もキャンペーンの応募まではいかなくとも話題として取り上げてくれる可能性が生まれるでしょう。カーネル・サンダースに扮したORマイスターの登場イベントも控えめながら話題性があり、すでに来店している顧客やファンに対してはイメージの強化につながります。また、チキン感謝祭の密かな斉行も、強い関心を持つファンのみぞ知るという狭く深いイメージアップとしての側面がある一方で、それを大々的に公表せず行う粋さはたまたま知った一般層の印象も効果的に向上すると思われます。

つまり、ケンタッキーはファンのロイヤルティを重要視する施策を展開しながら、その副産物としてリードジェネレーション的な効果を狙っているといえるのではないでしょうか。ファンの量を増やすことばかり重視するのではなく、ファンの質の継続的な向上も意識していく。そんなケンタッキーの施策を参考にしながら、ファンへのアプローチの仕方を再考してみるのもいいかもしれません。