てんや公式Twitterのひと味違うクーポン配布方法がもたらす効果とは

みなさんは普段、どれくらいクーポンを使いますか? クーポンといえば、以前は街頭で配られるティッシュや、新聞に挟まっているチラシなどについている紙媒体のものを目にする機会が多かったと想います。最近ではスマートフォンの普及によってアプリなどを通じたクーポンの配信・配布の機会が増えたこともあり、とても数え切れないほどのクーポンが日々発行されています。

クーポンを発行する企業の視点で見れば、自社の商品を購入してもらうためのインセンティブとして配布するのですから、1人でも多くの人に届けたいと考えるもの。そのために各社はリアルでもインターネット上でも、様々な工夫を駆使しています。

そんな各社の工夫の中でも、ある企業の公式Twitterアカウントが行っているクーポンの配布の仕方がとても興味深いものでした。その企業とは、天丼・天ぷらのファストフードチェーンの「てんや」です。今回はこのてんやのクーポンの配布の仕方についてご紹介したいと思います。

よく見るリツイートキャンペーン

てんやのクーポン配布法の独自性を説明するため、まずTwitterを介した一般的なクーポンの配布方法について紹介します。

国内企業のTwitter公式アカウントの中でフォロワー数ランキング上位に名を連ねるのは、ローソン(約461.8万人)、セブンイレブン(約322.4万人)、ファミリーマート(約179.7万人)などのコンビニ各社のアカウントです。こういったアカウントは商品や景品の無料プレゼントを含むリツイートキャンペーンを頻繁に行います。

このような、アカウントをフォローした上で商品の紹介文を含むツイートをリツイートすると、抽選でその商品が当たるというものです。多くのキャンペーンでは抽選に外れてもその商品を購入する際に割引が適用されるクーポンが配布されます。

このキャンペーンのメリットは

  • フォロワーを増やすことができる
  • 商品の宣伝ツイートを拡散させられる
  • クーポンを配布して来店を促せる

以上の3つもの効果を同時に狙うことができるという点にあります。もちろん景品の準備やクーポンの配布などによって一定のコストはかかりますが、Twitter上でやることという点でいえば文章を考えて1つ(期間が複数日に及ぶのであればその日数分)のツイートをすることのみです。

クーポン配布のみにとどまらない、効率的なTwitterの活用法と言えるでしょう。

てんやのクーポンの配り方

それでは、今回注目するてんやはどのようなクーポンの配布の仕方をしているのでしょうか。てんやはすべての人に共通のクーポンを公式サイトで公開していますが、それをTwitter上で配る方法に独自性があります。

先日、とあるツイートがTwitterで少し話題になりました。

なんだか心温まるエピソードではありませんか? 実はてんやの公式Twitterアカウントは、自分からてんやにまつわるツイートを検索し、一部のツイートに対してコメントやクーポンを送っているのです。

こういった「人情」的な要素が、てんやのTwitter公式アカウント運用の特徴であるといえます。

不特定多数に向けて情報やクーポンや情報を発信するのではなく、個人に対してリプライを送るという形でクーポンを送る。一対多ではなく一対一。このように表現すると非常に効率が悪いような気がしますし、なぜそのような手段をとるのか不思議に思われる方も少なくないでしょう。

確かに量的な視点から見れば非効率的かもしれませんが、一対一のコミュニケーションにはユーザーとの関係の質という点でメリットがあります。

一対多の情報発信は、いわば利害関係に基づく交流です。アカウントや商品の宣伝をしたい企業が、プレゼントやクーポンを用意してユーザーにアクションを促し、ユーザーは主にそのプレゼントなどを目当てにフォローやリツイートなどを行う。こういった形で増えるフォロワーの多くは、企業やブランドの「ファン」ではなく、単純に「お得」を求めるユーザーであると言えるでしょう。

一方でてんやが行うような一対一のコミュニケーションは、人間的な語りかけや会話を含みます。そういったやり取りを行うことで、ユーザーは普段人と接するときと同様に企業やアカウントへ何らかの感情を抱きます。もちろん失敗すればネガティブな印象になることもあるでしょうが、「企業がわざわざ自分一人のためにリプライを送ってくれた」というポジティブな印象を持つ人は多いのではないでしょうか。

実際、てんや公式アカウントからリプライがきたことに対しての反応には、以下のような好意的なものが珍しくありません。

このように、単純に利害関係によってつながるだけでなく感情的にも関心を持ってもらうことで、よりその企業に対して好意的なフォロワー、すなわちファンを獲得できるのではないかと考えられます。

てんやのフォロワーの「ファン」率

ここで、てんやのアカウントとコンビニ系のアカウントの間で、ツイートに対してより好意的な反応を示してくれるフォロワーの割合を比較してみましょう。フォロワー数に対するツイートのいいね数を見ることで、そのアカウントのツイートに積極的に接しているフォロワーがどの程度いるのかを判断する一定の目安になるのではないかと思われます。

比較するのは新製品に関するツイートです。てんやの「ずわい蟹と帆立の天丼」についてのツイートと、ローソンのおにぎりについてのツイートを比較します。おにぎりを選んだのは主食となるという点で比較的天丼に性質が近いと考えられるためです。

てんやのフォロワー数は約1万8000人、該当ツイートのいいね数は66件です。いいねを押したユーザーが全員フォロワーであると仮定した場合、反応したフォロワーは0.36%となります。

一方ローソンのフォロワーは約458万2000人、該当ツイートのいいね数は1618件。同じくすべてフォロワーによるものと仮定すると、0.035%のフォロワーが反応を示したということになります。

以上のように、いいねが送られる率に大きな差が出ていることがわかります。なお、同様にフォロワー数に対するリツート数の率で見ても、てんやが約0.16%、ローソンが約0.0066%と、てんやがローソンを大きく上回ります。

リツイートは単純に商品を魅力的だと感じたものを拡散するために行われる場合もありますが、自分自身はそれほど関心がなくても自分のフォロワーに紹介することでそのアカウントを支援したいという意図による場合もあります。てんやのツイートへのリツイートの中には、そういった動機によるものも多いのではないかと推察されます。

その他企業のTwitter活用例

てんやのクーポンの配布の仕方を通じて、SNS上でのユーザーとのコミュニケーションの重要性が感じられました。しかし、ユーザーと能動的な対話を行っている企業公式アカウントはもちろんてんやだけではありません。

例えばドコモやau、ソフトバンクなどの携帯電話キャリア各社は、Twitter上でスマートフォンの操作などでトラブルが起きた旨を報告するツイートを検索し、ユーザーが問い合わせる前に積極的にリプライを送り問題を解決しようとします。

このように積極的にアプローチすることで、問題の解決を億劫に感じるユーザーに製品やサービスを使い続けることを促したり、問題の発生による印象悪化を避けたりできるものと考えられます。

フォロワー数が100万人を超える大きな企業アカウントの中にも、能動的にユーザーへコメントを送るアカウントがあります。サントリーの公式Twitterアカウントはコンビニ系のアカウントなどと同様にフォロー&リツイートキャンペーンなども行いますが、自社商品に関するツイートの検索と能動的なリプライも行っています。

このようなツイートもあり、サントリーはかなりユーザー個人の存在を意識した形でのコミュニケーションを図っていることがわかります。絵文字や顔文字なども使ってかなりフランクにリプライを行っているようです。コンビニ各社とてんやなどの運用法の折衷と言えるでしょう。

まとめ

てんやを中心に、様々な企業の公式Twitterアカウントの運用法をご紹介してみました。しかし、こういったTwitterの運用法には、「正解」があるわけではありません。

コンビニは店舗数が多く、店舗でできることも幅広いためユーザーの来店の機会は比較的多いと考えられます。他方、てんやのように店舗数の限られる飲食店の場合は、大抵のユーザーは「食べに行こう」と意識しなくては足を運びません。

つまりコンビニは企業のファンを増やすことよりも、販売する商品を多くの人に知ってもらうことがより大きなメリットになり、てんやの場合はまず企業のファンになってもらい来店を促すことを必要としているのだと考えられます。会社の性質や抱える課題によって、Twitterの活用方法の「正解」は違うのです。

企業が宣伝や広告を目的にTwitterを活用するときに重要なのは、単純に他社の手法を真似ることではなく、まず自社に必要なものが何かを洗い出した上で、適した運用法を考えていくことなのではないでしょうか。