ファンが熱狂する理由はフォロワー数ではなくフォロイー数でわかる。サンリオのTwitter運用が示すもの。

みなさんはサンリオの公式Twitterや、サンリオキャラクターの公式アカウントをご覧になったことがありますか?

参考 サンリオキャラクター公式Twitterサンリオ

様々なアカウントがあるのですが、ある点に着目してみるとサンリオが非常に巧みにTwitterを運用していることがわかります。

ずばり、注目すべきある点というのは「フォロイー(followee)」、すなわち「サンリオ公式Twitterやそれぞれのキャラクターのアカウント」がフォローしている人たちのことです。普段はついフォロワー数ばかり気にしてしまいがちですが、実はフォロイーに注目することで見えてくるものがあるのです。

サンリオ公式のフォロイー数

今回取り上げるのは計4つのアカウント。サンリオ全体の情報発信用の公式アカウント、ポムポムプリン、マイメロディ、リトルツインスターズです。ちなみに、意外なことにサンリオキャラクターの代名詞的存在といってもいいハローキティ個別の公式Twitterアカウントは存在していません。

まずはサンリオ全体の情報発信用の公式アカウント。こちらは2.6万人のフォロイーがいます。

サンリオキャラの人気投票であるサンリオキャラクター大賞で3位となったポムポムプリンのフォロイー数は1630人。

同賞で4位となったマイメロディは4796人。

6位のキキララことリトルツインスターズは934人となっています。

サンリオ全体の情報を発信するアカウントの2万人超えはいわずもがな、マイメロディの約5千人という数字も企業の公式アカウントとしては多いように思われます。ポムポムプリンとキキララのような1000前後であればそれほど珍しくはないかもしれませんが、自社関連アカウント以外フォローしないアカウントが多いことも考えるとそれでも比較的大きな数字と言えます。

サンリオのキャラクタービジネスのライバルと言えるサンエックス社の場合、リラックマの公式Twitterアカウントのフォロイー数が24人、すみっコぐらしのアカウントのフォロイー数は16人となっています。いずれもフォローされているのは公式に関わりのあるアカウントのみです。

その他のキャラクターで言えばスヌーピーの公式アカウントは9人、ムーミンの公式アカウントに至っては0という徹底ぶりです。サンリオのキャラクターアカウントの投稿がイラストメインである一方で、その他の企業のアカウントは商品情報の発信なども行っているという運用スタイルの違いもありますが、やはりサンリオのフォロイー数の多さは特異であると言えるでしょう。

フォローの価値とは

なぜサンリオのTwitter運用が巧みなのかという本題に入る前に、Twitterにおけるフォローという行為の価値を確認しておきましょう。

Twitterでは、他のユーザーに対して好意的な反応を示す手段が言葉以外にもいくつかあります。1つは文字通りの好評価を表す「いいね」、拡散であるリツイート、そしてアカウントに対して行うフォローも好意的な評価の1つであると言えます。

「いいね」は単純に、目にしたツイートに魅力を感じたことを表す手段です。一方でリツイートは「他の人と共有したい」と思うほどの魅力を感じた場合にされることが多いと言えます。中には反論するためのリツイートもありますが、好意を表現する場合は「いいね」よりもさらにポジティブな反応であると言えるでしょう。

フォローはその2つよりも強い好意の表明になります。特定のツイート、もしくはそれ以外の複数のツイートを見て「面白い」、「気が合う」などの印象を抱いてフォローするという行為は、ツイート単体だけでなく、人格(アカウント)を評価したことを意味します。それゆえ個々のツイートに対する反応以上に強く好意を伝える反応だと言うことができます。

独り言をつぶやくためのスペースとしてTwitterを活用している人などもいるので一概には言えませんが、少なくともコミュニケーションの手段としてTwitterを活用している人にとって、フォローは無言で行える最大限の肯定的評価だと言っていいでしょう。

フォローをインセンティブにするサンリオ

サンリオは、このような「フォロー」の価値をよく理解して公式Twitterアカウントを運用していると考えられます。

サンリオ全体のアカウントやサンリオキャラクターアカウントのフォロイーの中には、同じサンリオ関連のアカウントや関わりのある企業や組織のアカウントも含まれますが、他の企業アカウントとくらべると一般人のフォロイーの多さが目立ちます。

サンリオは一般人のアカウントもフォローしますが、当然誰も彼もフォローするというわけではありません。フォロワー数にくらべてフォロイーの数が圧倒的に少ないことから考えると何かしらの基準があり、フォローしてくれた人を必ずフォローし返すというわけではないようです。

では、サンリオはどのような条件で一般人をフォローするのでしょうか。

Twitter上ではこんな意見が上がっています。あくまで一般のユーザーの意見であって、これが正解とは限りません。ただ、営利企業の宣伝活動である以上そういう基準でフォローをしているという理屈には一定の説得力があります。理由を推察したときにその可能性が真っ先に頭に浮かぶという人も少なくないでしょう。

しかしこの基準の真偽をはっきりさせることに意味はありません。なぜなら、多くの「サンリオの公式アカウントにフォローされたい」と思うファンたちは、その基準に確信が持てなかったとしてもそれを前提に行動すると考えられるからです。「何かアクションをすればフォローしてもらえるかも」と思わせる状況こそが重要なのです。

こういったツイートからわかるように、サンリオは一部のファンをフォローして「特別扱い」することでそうでないファンの承認欲求を刺激し、その欲求をUGCの生成につなげていると言えます。ここで生まれるUGCは主にリプライやリツイートであり、多くの人の目に入らないリプライや一般人によるリツイートではバズにはつながらないかもしれませんが、これらはアンバサダーマーケティングを行う上で非常に重要になってきます。

アンバサダーの養成

アンバサダーマーケティングとは、フォロワー数のような量的な発信力の高いインフルエンサーではなく、熱意や愛情のような質的な発信力が高いユーザー(アンバサダー)の力を借りたマーケティングです。当サイトの記事で恐縮ですが、詳細についてはこちらをご覧ください。

参考 これからのマーケティングにはインフルエンサーよりも「1人のファンの熱狂」が必要なワケFanTerrace

現在はいわゆる「ステマ」騒動などの影響もあり、インフルエンサーによる宣伝も効果的とはいえないどころか、不信感や不快感の原因になることすらあります。それゆえ、商品などをおすすめする人は、お金の力で動かされているわけではない「本物」のファンであることが望ましいと言えます。サンリオのフォローバック施策が促すUGCの生成は、そのような「本物」のファン、すなわちアンバサダーを養成することにつながるのです。

なぜアンバサダーの養成につながるのか。マイメロディの公式アカウントを参考に紐解きます。

こちらはマイメロディの公式アカウントがクリスマスに発信したツイートです。何も知らずにこのツイートを見ると「ぴれぜんと」という表現に引っかかり、誤字なのではないかと思うのが自然です。しかしファンのリアクションは異なります。

実はこの「ぷ」を「ぴ」といい間違えるのは、今回が初めてではないのです。

マイメロディの公式アカウントでは以前から「ぷ」を「ぴ」と言っています。遡って確認できた範囲では、2014年にはすでに「ぷれぜんと」とうまく言えないという内容のツイートがされていました。すなわちこの「ぴ」はファンにとってはおなじみのネタというわけです。

この「言い間違い」の一貫性に気がつき指摘までするファンは、継続的に一定の関心を持ってキャラクターに接しており、アンバサダーとなるにふさわしい「ファン度」を持っていると言えるでしょう。

つまり、フォローをインセンティブとして継続的な関与やリプライなどのUGCの生成を促すことが、キャラクターや会社に詳しいアンバサダーの養成につながっているのです。また、リプライを送ってもらうことで、そういったアンバサダーの存在を可視化できる利点もあるでしょう。

まとめ

一般人もフォローするものの、フォローするのは一部でその基準はユーザーにはわからない。それによりユーザーは自発的に公式Twitterアカウントの活動に注意を向けたり、積極的に行動を起こしたりするようになる。サンリオは、キャラクターに対する熱心なファンの心理を突いた非常に巧みな駆け引きをTwitterで行っていると言えます。その結果、現在のマーケティングにおいて重要なアンバサダーの養成、可視化を実現しています。

ただし、それは必ずしもポジティブな効果だけを生むものではありません。実際、サンリオの公式Twitterに関するツイートの中には、フォローバックしてもらえないことに関してネガティブな感情を抱いていることを思わせるものも少なくありませんでした。

ファンとの付き合い方には様々あり、すべてのファンを平等に扱うのが無難であることは間違いありません。しかしサンリオのように熱心なファンを特に優遇することは、アンバサダーとなり得る優良なファンを効果的に養成することにつながります。優遇を受けられなかったファンへの配慮を忘れないようにするという当たり前の条件はつきますが、ファンの質をより強化しようとするサンリオのTwitter運用には参考にできる部分があるのではないでしょうか。