“越境”するキャラクターに商機。サンリオキャラビジネスの最前線『SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!』

サンリオといえば、ハローキティを始めとする、主に少女・女性向けのキャラクターを扱う企業というイメージが強いかと思います。しかし、実はサンリオはその「カワイイ」イメージと裏腹に、したたかで周到なマーケティング戦略を駆使する企業でもあるのです。

ファンが熱狂する理由はフォロワー数ではなくフォロイー数でわかる。サンリオのTwitter運用が示すもの。

以前にも上記の記事にてサンリオのTwitter運用について考察したことがあるのですが、今回は現在放送中の『SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!』というTVアニメ作品を通じて、サンリオのキャラクタービジネスの面白さをご紹介したいと思います。

「SHOW BY ROCK!!」とは

初めに「SHOW BY ROCK!!」というプロジェクトについてご紹介します。「SHOW BY ROCK!!」は2012年に本格的に始動した、バンドをテーマとしたサンリオのキャラクタープロジェクトです。

参考 CharacterTVアニメ「SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!」公式サイト

上記の公式サイトをご覧いただけばわかるかと思いますが、他のサンリオのキャラクタープロジェクトと比較した際の最大の特徴はキャラクターがリアル等身で描かれることにあります。当初軸となっていたのはリズムゲームアプリでしたが、こちらは現在サービスを終了しています(新規ゲームアプリが近日サービス開始予定)。2015年にはTVアニメも放映されました。

TVアニメの放送が深夜帯だったことも含め、サンリオの中では珍しい青年層(男女とも)をターゲットとしたプロジェクトだと言えます。

ちなみに2015年のサンリオキャラクター大賞では「SHOW BY ROCK!!」発のバンド、「シンガンクリムゾンズ」が2位に、同じく「プラズマジカ」が6位に入っており、一定の存在感を獲得したプロジェクトでもあります。

参考 「2015年サンリオキャラクター大賞」結果発表サンリオ

そのプロジェクトにおける最新のコンテンツが、新作TVアニメシリーズ『SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!』(以下、「ましゅまいれっしゅ」と表記)です。この作品でメインとなるのが「Mashumairesh!!」というバンドなのですが、このバンドのメンバーであるキャラクターはアニメ以前からキャラクタープロジェクトとして展開されています。

それらのキャラクターの展開を見ていくことで、「ましゅまいれっしゅ」というアニメ作品が果たす役割がわかります。以下ではまず各キャラクターの個別の展開について概観した上で、そこから導き出される「ましゅまいれっしゅ」の役割について考察したいと思います。

次元をまたぐコンテンツ群

アニメや漫画、ゲームの分野では、作品それ自体などの絵やイラストのキャラクターを軸に展開されるコンテンツを2次元、現実で展開されるコンテンツを3次元と通称します。近年はキャラクターを現実の俳優さんが演じてパフォーマンスを行う2.5次元と呼ばれる舞台も盛り上がりを見せています。

「ましゅまいれっしゅ」に登場するキャラクターはこの2~3次元の間で、多様な形でプロジェクトを展開しています。

ルフユのYouTube動画

SHOW BY ROCK!!公式チャンネルでは、「SHOW BY ROCK!!ルフユの神ドラムへの道!」という動画が公開されています。ルフユは「Mashumairesh!!」のドラム&ボーカルを担当するキャラクターで、動画にはアニメでルフユ役の声優を務める山根綺さんが出演しています。

参考 SHOW BY ROCK!!ルフユの神ドラムへの道! #0 Mashumairesh!!メンバー紹介!YouTube

動画をご覧いただくとわかりますが、内容としては山根さんがルフユに扮してルフユが「神ドラムと呼ばれるまで特訓していくチャンネル」であるとのことです。

声優本人としてではなくルフユというキャラクターを演じる形で出演しているこちらは、典型的な2.5次元コンテンツであると言えるでしょう。

ちなみに、第0回のタイトルは「Mashumairesh!!メンバー紹介!」、第1回は「ルフユのドラムを組み立てろ!」、第2回は「ルフユのドラムスティックを作れ!」、第3回「自画像パンケーキアートを作れ!」、第4回「サンリオのキャラで逆さ絵を描け!」、第5回「Mashumairesh!!をラテアートで」となっています。ドラムどこいった。

サンリオアニメストアのほわん

ほわんは「Mashumairesh!!」ではギター&ボーカルを担当。「ましゅまいれっしゅ」以前から、サンリオアニメストアの看板娘を務めているキャラクターでもあります。

ほわんのコンテンツとしての主な展開には、サンリオアニメストア公式Twitterアカウントで掲載されている「サンリオアニメストアのほわんちゃん」という4コマ漫画があります。その他にも多様な形で展開されていますが、2.5次元的な要素を持つ展開として「AIほわん」と「ライブ&お渡し会イベント」などがあります。

「AIほわん」は看板娘が出張するという形で、キャラクターグッズショップであるゲーマーズの秋葉原店で「接客」を行うという企画で登場しました。

これはAIとデジタルサイネージを活用し、ほわんが名前を呼んでくれたり、タッチすると反応したり、こちらの表情を読み取って反応したりと、インタラクティブなコミュニケーションが可能な企画です。2次元でありながら3次元に存在し触れ合えるという点で、2.5次元的な展開だと言えるでしょう。

また、ゲーマーズ秋葉原店ではサンリオアニメストアのテーマソング発売記念イベントも開催されています。

こちらはほわん役の遠野ひかるさんがほわんに扮してライブやお渡し会を行うという内容で、ルフユのYouTube動画と同様、一般的な意味での2.5次元的展開であると言えます。

以上から、ほわんに関しては2次元、現実で接点を持てる2次元、そして2.5次元と、次元においてグラデーション的に幅のある展開がなされていると言えるでしょう。

マシマヒメコのSHOWROOM

マシマヒメコは「Mashumairesh!!」のギター&ボーカル担当のキャラクターです。マシマヒメコは「となりの研究生マシマヒメコ。」として2018年の12月からプロジェクトが展開されています。

主な活動はSHOWROOMでの生配信ですが、YouTubeにも既存の楽曲をカバーするいわゆる「歌ってみた」動画をアップロードしています。YouTubeに投稿されている「パワープッシュカット」と称するSHOWROOM配信の抜粋動画から、 配信の雰囲気を簡単に掴むことができます。

参考 【マグロ的パワープッシュカット】1/21配信分YouTube

ルフユとは異なり、CGを使うことで外見上もキャラクターになりきって配信をしていることがわかります。こういった形態の配信は主にYouTubeにおけるバーチャルYouTuberが有名ですが、SHOWROOMでも「東雲めぐ」を皮切りに「バーチャルSHOWROOMER」という触れ込みで2次元的な外見でのインタラクティブな配信が展開されており、マシマヒメコの活動もその一部であると言えます。

マシマヒメコはその東雲めぐとのコラボ配信も行っており、「ましゅまいれっしゅ」アニメ3話では背景に東雲めぐのサインが書かれているという密かなコラボも行われていたようです。

デルミンのゲームやイベント出演

デルミンは「Mashumairesh!!」でベース&ボーカルを担当するキャラクターです。プロジェクトの本格的な始動は2019年3月です。

最初の展開はスマートフォン向けゲームアプリ「♯コンパス 戦闘摂理解析システム」 への参戦でした。サンリオのキャラクターでありながら、まず自社のコンテンツではなく他社のゲームに出張するという形で展開するという非常に興味深い施策です。

2018年12月にTwitterが始動したマシマヒメコのフォロワー数が約3000人、一方のデルミンは約2万人となっています。この数字は、新しいキャラクターの知名度を向上させるのに、まず人気のあるコンテンツとコラボをするという展開が極めて有効であることの証拠でしょう。

ちなみにデルミンはゲームという形でまず2次元的な展開をしていますが、担当声優である和多田美咲さんがデルミンに扮してDJとして音楽イベントに参加する「DJ DEVILMINTKIRYU」というプロジェクトも展開されています。

キャラクターのブランディングのために

以上のように、「ましゅまいれっしゅ」に登場するキャラクター4人は、アニメの放映前から次元をまたいで多角的にプロジェクトを展開しています。つまるところ、「ましゅまいれっしゅ」はサンリオのリアルとキャラクター世界がつながりどちらかのみで完結しない、2.5次元系プロジェクト群のポータル的な存在なのだと思われます。

こういったサンリオの企画の背景には、サンリオのファン拡大志向があると考えられます。

参考 ハローキティからメンズ向けのファッションアイテムが誕生! 「WWDジャパン」誌が選んだブランドとのコラボねとらぼ

例えばこのように、サンリオはハローキティに関連するメンズ向けのアイテムを扱う「HELLO KITTY MEN」のようなブランドを展開しています。一般的に「カワイイ」、少女・女性向けのキャラクターを扱うブランドとみなされているであろうサンリオですが、イメージとは異なる層の取り込みにも積極的であることがわかります。

現在のキャラクタービジネス業界の潮流として、バーチャルYouTuberのような2次元的なキャラクターの外見で現実のユーザーとコミュニケーションをとるコンテンツや、現実でキャラクターに扮して行われる2.5次元の舞台などが人気を博している状況があります。

参考 前年比45%増。成長を続ける2.5次元ミュージカル市場/ぴあ総研が調査結果を公表ぴあ

こちらの調査からわかる通り、2.5次元舞台は2017年から2018年にかけて市場規模が約45%増となっており、成長の著しい分野となっています。キャラクターを軸にしたコンテンツの流行ということで、サンリオはここに商機を見出したのではないでしょうか。

すでに2.5次元舞台については、先に紹介したサンリオキャラクター大賞で2位を獲得した「シンガンクリムゾンズ」などによるライブミュージカルが、2016年以降複数回に渡って上演されています。

それらに加えて

  • 2.5次元YouTuber(ルフユ)
  • 2.5次元DJ(デルミン)
  • バーチャルSHOWROOMER(マシマヒメコ)
  • 柔軟に展開される公式ショップの看板娘(ほわん)

などのキャラクターの売り込みを行っているのが、現在のサンリオの2.5次元系分野へのアプローチだと言えます。

とはいえ、当然キャラクターが現実に越境してくることそれのみで人気を得ることができるわけではありません。キャラクターが人気や認知度を得るには、何かしらのマス展開が必要になります。人気コンテンツとコラボする形でデビューしたデルミンと、地道に配信活動をしているのみのマシマヒメコのTwitterフォロワー数に大きな格差が生まれていることからもそれは明らかです。

つまりアニメ「ましゅまいれっしゅ」は、それぞれのキャラクターを同時に出演させ、一挙にその認知度を高めるためのプロジェクトであるということです。言い換えれば、「ましゅまいれっしゅ」は現実において芸能事務所がタレントや俳優を売り込むためのテレビドラマなどと同じような位置づけということになるのではないでしょうか。

まとめ

以上から、サンリオが現在、2.5次元系のキャラクタービジネスにも力を入れており、「ましゅまいれっしゅ」はそれらのキャラクターのブランディングとして機能していることがわかりました。商機を見出す力、そのアプローチとしての展開の多様性に「さすがはサンリオ」と感じました。いずれのキャラクターも認知度、人気はまだまだ発展途上です。今後もサンリオがどのようにマーケティングを展開していくか注目していきたいと思います。