なぜ「Pokémon Day」でポケモンGOにコピーピカチュウを登場させたのか。ポケモンのSNS戦略のうまさ

「Pokémon Day」を記念した企画として、ポケモンGOに「コピーピカチュウ」が登場したことが話題になっています。「Pokémon Day」とは主に海外ファンの間に広がっている、ポケモンの最初のゲームソフトである『赤』と『緑』が発売された2月27日を祝うものです。

参考 2.27は「Pokémon Day」 ポケモン・オブ・ザ・イヤー

今回は日本でも「Pokémon Day」を広めようということで、日本記念日協会の認定を受けて大々的にキャンペーンが展開されるようです。そのうちの1つが、ポケモンGOへの「コピーピカチュウ」などの登場なのです。

この重要な日を祝うのに、なぜ「コピーピカチュウ」だったのでしょうか。それを考えることでポケモンのプロモーション戦略のうまさが見えてきます。

コピーピカチュウとは?

コピーピカチュウは『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』に登場するポケモンです。以下、作品の内容への言及がありますので未見でネタバレを避けたい方はご注意ください。

『ミュウツーの逆襲』は1998年に上映されたアニメ映画作品です。2019年には『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』としてリメイクも行われました。主に子供向けの作品でありながら、生命の人造という、現在においても未だに明確な解答の難しい倫理的な問題を含む非常に重い作品でもありました。

タイトルにも登場するミュウツーはミュウというポケモンを元に生み出されたポケモンです。ミュウツーは身勝手な人間に復讐するため、自分と同様に元のポケモンの複製であるコピーポケモンを作り出します。その中の一匹が、ピカチュウの複製であるコピーピカチュウなのです。

コピーピカチュウを出す意味

ポケモンのもう一つの原点

コピーピカチュウはアーマードミュウツーや、リザードン、カメックス、フシギバナの3ポケモンのコピーと同時にポケモンGOに登場しています。アーマードミュウツーは『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』の上映を記念して初登場したのちの復刻という形ですが、今回は『ミュウツーの逆襲』をより強く想起させる企画になっていると言えます。

なぜ『ミュウツーの逆襲』なのか。それは『ミュウツーの逆襲』がゲームに並ぶ、ポケモンのもう一つの原点だからでしょう。

『ミュウツーの逆襲』はポケモン映画の記念すべき第一作です。その内容の深さもあって未だにファンの間で根強い人気を誇っており、それは10年ものときを経てリメイクされたことからも明らかです。いわばこの作品が、20作を超えて続くポケモン映画の礎を築いたのだと言えます。

コピーピカチュウと『ミュウツーの逆襲』がTwitter上でトレンド入りしたことに反応して、このようなツイートが話題となりました。

まず、ポケモンGOの公式Twitterで作品名への言及がないにも関わらず、トレンド入りすることそれ自体が『ミュウツーの逆襲』の人気を物語っています。1998年版とリメイク版のどちらがよい作品だと断じるのは難しいですが、こういったツイートが話題になるのは同じように1998年版の作品に強い思い入れを持つ人が少なくないからこそでしょう。

つまりポケモンは、多くの人にとって思い入れの深い「原点」を想起させることで、記念日を祝うのにふさわしい形でユーザーのコミュニケーション、バズを創出したと言えるのです。

「知らない」層もバズの起点

コピーピカチュウ登場に際してはこのようなツイートも注目を集めました。実際のところコピーピカチュウに対して「何が違うのかわからない」と言及するツイートも多数あり、必ずしもコピーピカチュウや『ミュウツーの逆襲』を知っている人、思い入れがある人ばかりではないことがわかります。

これに対して個別にリプライをして『ミュウツーの逆襲』という作品のことを教えるユーザーがいたり、以下のような特定の個人に向けてではないメッセージとして発信されたツイートが多数リツイートされるなど、知らない人がいることによってバズが生まれるという現象も起きています。

こういったバズが起きる背景には、ポケモンGOというゲームのソーシャル性の強さがあるでしょう。

コピーピカチュウが登場するのは、ポケモンGOの「スナップショット」機能を活用した場合です。スナップショットは、スマートフォンなどのカメラを通して現実の風景の中に本当にポケモンがいるかのように画面に表示できる、いわゆる拡張現実(AR)のコンテンツです。

もはや世間では「インスタ映え」のような言葉が完全に定着しており、撮った写真をシェアしたいというのはごく一般的な欲求となっています。つまりポケモンを現実の風景に溶け込ませて撮影できるスナップショット機能自体がソーシャル性の高いものだと言えます。

さらに今回は「コピーピカチュウって何?」という疑問、誰かに聞いてほしい気持ちを誘発していることが、上記のツイートような形でのシェアを後押ししていると考えられます。そこを起点として、上述したような、リプライでコピーピカチュウの背景や見分け方などを指摘するコミュニケーションが生まれるのです。

あえてゲーム内でことこまかに説明しないことで知識的なギャップを作り出すことで「わからない」というモヤモヤを表現したい、解決したいという感情によるシェアを生み出し、そこからさらに「教えてあげたい」という気持ちからコミュニケーションが生まれて大きなバズとなる。ポケモンGOという「メディア」の特性と、SNSユーザーの心理をよく理解しているからこそ実現できた成功だと言えるでしょう。

まとめ

  • 映画を通じて思い出を刺激することでリアクションを引き出している
  • SNSと相性のいいゲームコンテンツを展開している
  • ユーザー間の情報量のギャップでコミュニケーションを生んでいる

以上の3点が、今回の「Pokémon Day」に合わせたポケモンGOのイベントを通じてわかる、ポケモンのソーシャル戦略のうまさだと言えます。これらを最も効果的に実現できるのが、コピーピカチュウの登場という施策だったのです。

ちなみにポケモンは過去に、当時ゲーム未登場でその他の媒体でも未発表だったポケモン「メルタン」をポケモンGOに登場させ、「新しいポケモンを見つけた!」という体験を演出することで大きなバズを生み出したこともあります。

これらに限らず、ポケモンは近年非常にソーシャル展開が積極的です。今後も注目していくと面白い発見ができるかもしれません。