アイマスにはハマらないと思っていたオタクがシャニマスでPになったわけ

私とアイマス

「アイドルマスター シャイニーカラーズ」(以下、シャニマス)というゲームをご存知でしょうか。このゲーム自体を知らなくても、「アイドルマスター」(以下、アイマス)というタイトルを耳にしたことのある人はいるのではないかと思います。2005年に最初の作品となるアーケード版の稼働が始まって以来、15年に渡って20を超えるゲーム作品を世に送り出しているシリーズです。

どのようなゲームかと言えば、プレイヤーが「プロデューサー」(以下、P)となってアイドルを育成するゲームです。一部を除いて基本的にPは男性として設定されており、有り体に言えばいわゆる「ギャルゲー」、主人公の視点で女の子と関係を深めていくことを目的とするゲームに近いものだと言えます。

私は以前からギャルゲーもプレイしていますし、今までもアイマスは決して嫌いではありませんでした。シャニマス以前にプレイしたことがあるのは「アイマス2」、「デレステ」、「ミリシタ」と、アプリゲーム中心の典型的なにわか丸出しではありますがそれなりに楽しんで遊んでいました。

ただ、それはアイマスが好きだからプレイしたという感じではなく、「アイマス2」はPS3を買ったときに物見遊山感覚で廉価版を購入したから、「デレステ」、「ミリシタ」は気軽に遊べるスマホゲーだからとりあえずやってみて、キャラがかわいいからしばらく遊んでいたという程度にすぎませんでした。

そこまで大きな熱量を持てなかった理由は一言に尽きます。

コミュがつまらない。

あくまで個人の感想ということでご容赦ください。これは客観的な批評批判ではなく、私が好むのがキャラの内面的な掘り下げドラマを含む物語で、これまで触れてきたアイマスのコミュ(アイマスにおけるエピソードやストーリーのこと)コメディタッチなやり取り中心だったというだけの、単純な嗜好の違いの問題です。

私の嗜好については、少年誌のラブコメよりも少女漫画の方が好きだと言うとわかりやすいかもしれません。まあ当方男性ですが。

そういうわけなので、シャニマスという新作ゲームがまた出ると聞いても特に関心を持つことはありませんでした。正確に言えば少しは触ってみたのですが、より苦手なシミュレーション系のゲームで、コミュにも期待していない中でプレイを続ける理由もなくその後1年半以上もの間シャニマスのことはスルーし続けていました。

そんな私がどうしてシャニマスにハマり、おそらく生涯なることはないだろうと思っていた「アイマスP」になったのかをお話したいと思います。

「あさふゆ」の衝撃

シャニマスへの関心が募るきっかけとなったのはTwitterでした。

コンテンツの消費において特別好きなジャンルがあるわけではないのですが、いわゆる「百合」も私の好むところであります。百合というのは女性同士の恋愛や友情、特別な関係を描くジャンルを指す俗語です。百合は必ずしも恋愛を描くものではなく、ここでの百合はほぼ友情的なものだと考えていただきたいです。

Twitterでは百合関連の情報やイラストなどが目に入ってくるようにしているのですが、そこにシャニマスに登場するアイドル同士の関係を描いたイラストが流れてきたのです。あくまでP視点でアイドルとの関係を描くのが本質であるアイマス作品のファンアートとしては、異質に思えました。

1度や2度までは一部の奇特な人の願望を描いただけだろうと気にも留めなかったのですが、その後も様々な形でシャニマスのアイドル間の関係を描いた作品が流れてきました。

一握りの人の妄想にしてはあまりに作品が多様且つ目にする頻度が高すぎると感じ、「シャニマスってなんなんだ……?」と関心が高まっていきました。

特に興味が湧いたのは芹沢あさひと黛冬優子(まゆずみ・ふゆこ)というアイドルの関係です。十把一絡げに言えばこの2人を描いたファンアートは「あさひが冬優子を無自覚に困らせる」という主旨のものが多いのですが、なぜか芹沢あさひというキャラはクワガタやら何やら、およそ「アイドルらしさ」とはかけ離れたものを手にしていることが多いのです。意味がわからなすぎてどんどん気になっていきました。

ちなみに百合の世界では、というか百合に限らずキャラ同士の関係そのものを語るときにキャラの名前2文字(2音)をくっつけた4文字(4音)を呼称とする慣例があります。芹沢あさひと黛冬優子なら「あさひ」と「ふゆこ」で「あさふゆ」となります。

シャニマスのコミュ

「あさふゆ」が単なる妄想なのか、それとも実際にアイドル間の関わりがゲームでもちゃんと描かれているのか、その答えを求めて私はシャニマスを始めました。

結論から言うと、めちゃくちゃありました。

現在のシャニマスのコミュはざっくり言うと、

  • プロデュース(W.I.N.G.編)
  • プロデュース(ファン感謝祭編)
  • ゲーム内イベントのコミュ
  • 「プロデュースアイドル」カードのコミュ
  • 「サポートアイドル」カードのコミュ

以上の5種あります。「プロデュースアイドル」と「サポートアイドル」というのは、ゲーム内で獲得できるカードの種類の別です。プロデュースは「プロデュースアイドル」1人と「サポートアイドル」5人を使って行います。「プロデュースアイドル」と「サポートアイドル」それぞれに、獲得することで見られるようになる専用のコミュがあります。

このうち、プロデュース(W.I.N.G.編)と「プロデュースアイドル」のコミュは主にPとアイドルの関係を描くコミュで、それ以外はほとんどアイドル同士のやり取りやストーリーを描いたものでした。

しかも、どれもこれもめちゃくちゃ質が高いんです。

プロデュース(W.I.N.G.編)がPとアイドルの出会いを描くコミュで、それを通じてどのようなキャラなのかが紹介されます。「あさふゆ」目当てで始めたわけなので、まずはこの2人のプロデュースをすることにしました。

冬優子Pになった

見出しで即オチしてますが見なかったことにして続きを読んでください。

先程、私は「キャラの内面的な掘り下げドラマを含む物語」が好きだというお話をしました。内面的な掘り下げというのはざっくり言ってしまえば、どんな悩みや葛藤を抱えているかの描写です。ゲームにしろ現実にしろ、悩みには少なからずその人の本質や性格が反映されるものだと思います。

冬優子のW.I.N.G.編コミュはその点においてすごく私好みのコミュで、「このアイドルをプロデュースしたい」という感情を抱きました。このとき初めて、私は先達であるアイマスPたちが「◯◯担当」と名乗る気持ちを理解したのです。

ここからは少なからずコミュの内容に関するネタバレを含みますのでご注意ください。

まず簡単に黛冬優子がどんなキャラかを説明しましょう。

常に控えめな笑顔で、清楚に見える女の子。可愛いものが大好きで、周囲への気配りをするなど人に好かれるように振る舞う。専門学校1年生。

https://shinycolors.idolmaster.jp/idol/straylight/fuyuko.html

公式サイト上の紹介文は以上の通りです。清楚に「見える」とか、好かれる「ように」とか、この紹介文だけでなんとなくどんなキャラか察した方もいるのではないかと思います。

もったいぶっても仕方ないのではっきり言ってしまいますが、端的に言えば冬優子はウラオモテのあるキャラです。誰にでも愛されることを目指す「ふゆ」という表面と、遠慮なく物を言うやや口の悪い裏面という感じです。

W.I.N.G.編のコミュでもやはりそこが鍵になってきます。

あらすじとして紹介すると、アイドルとしての仕事をしていく中で「ふゆ」としての冬優子の笑顔が作り物だと指摘され、それに対して「ふゆ」ではない自分を見せるのではなく、より完璧な「ふゆ」を見せることで納得させるという結論を出す、という流れです。

この中で「これも」偽りではない本当の笑顔だと表現されているのが、個人的にものすごく好きなポイントです。「本当の自分をさらけ出す」というような陳腐な方向にいかず、逆に「ふゆ」ではないときの冬優子は偽者だと捨てるわけでもない。重要なのは、冬優子は別に無理をして「ふゆ」を演じているわけではなく、「ふゆ」こそが冬優子にとっての自己実現だということです。

人はとにかく、本性とか本音とか本当の自分とか、そういったものを重要視しがちです。別にそれが常に間違いだとは思いませんが、私は目の前の人によって態度が変わるのは「その人の前でどんな自分でありたいか」ということを、相手との関係を、真剣に考えているからこそだと思っています。

それに何より、その人の在り方はその人のものであって、誰にも指図を受けたり歪められたりするべきものではないとも思います。その点において、一般論ではなく冬優子がどう在りたいかを第一に考えながら問題を解決するこのコミュは、非常に私好みのものだったのです。

一定の重さを持った悩みへのアプローチ、そしてその悩みへの結論の出し方に関する感性の一致。私がこれまでアイマスというコンテンツにはないものと思っていた要素を見事に突きつけられました。そして、自分の哲学を貫き通し堂々と胸を張る黛冬優子というキャラが、心底から好きになりました。

あさふゆはいいぞ

あさふゆに触れるための予備知識の収集のつもりで始めたのに、冬優子のプロデュースをした時点でシャニマスにハマってしまいました。私がPになるまでをお話するという記事の目的を達してしまいましたね。4コママンガが3コマ目でオチたようなものです。しかしあさふゆの話が途中なので4コマ目はそこに触れておきます。

冬優子に続いて、芹沢あさひというキャラのことを紹介するため公式サイトの紹介文を引用します。

常に面白いことを探し、じっとしていることがない、探究心の強い女の子。興味を持ったら一直線だが、飽きっぽい一面も持つ中学2年生。

https://shinycolors.idolmaster.jp/idol/straylight/asahi.html

なぜかクワガタを手にしたあさひのファンアートを目にしたという話をしたかと思いますが、その探究心ゆえ何事も忌避することなく触れてみるというのがあさひの性格だということです。簡単に言えば素直で自然体。自分の気持ちに正直で、冬優子とは正反対だと言えます。

特にゲーム内の「Straylight.run()」というイベントで公開されたコミュでは、冬優子とあさひの考え方の違いが如実に表れます。

2人は和泉愛依というアイドルと3人で「ストレイライト」というユニットを組んで活動することになるのですが、「自分に正直にやりたいようにやるのが一番」だと訴えるあさひに対し、冬優子は「芸能界にはさまざまな事情が入り組んでいるから常に本音でいることはできない」という立場で向き合い衝突します。どちらの主張も、キャラとしての本質的な性格からくる主張であり、非常に熱い感情のぶつかり合いを見ることができます。

読み手をハラハラさせる物語というのは一歩間違えば読み手に大きなストレスを与えます。主張をぶつけ合う中でもお互いの主張にしっかり納得感があり、ぶつかり過ぎず絶妙なタイミングで矛を収め、ときに愛依が間に入り、というようにすさまじく繊細なバランス感覚で構築されているコミュです。

正直なところこのコミュに関してはあらすじを語って面白いものではなく、アイドルたちの言葉にこもった熱量を感じて胸を打たれるのが魅力だと思うので、ぜひ実際にゲームで読んでほしいです。過去のイベントはアイテムを使用することで見ることができます。

あとは「ファン感謝祭」のコミュも見てください。あと「きよしこの夜 プレゼン・フォー・ユー!」というイベントコミュも読んでください。ここにはシャニマスの舞台となる芸能プロダクション、283プロの「アイドルの個性を大切にする」というコンセプトが凝縮されています。あと「【あめ、ゆき、はれ】芹沢あさひ」というあさひのサポートアイドルカードのコミュも見てください。あとは……と言い続けるときりがないのでここまでにしますが、最後に一言。

あさふゆはいいぞ。

終わりに

直近のアルストロメリアというユニットのイベントコミュのやばさを語ろうかなという考えもあったのですが、以前のコミュなども含めた構造としての複雑性がやばすぎて「やばい」以上に言語化できる自信がないのであきらめました。

アルストロメリアもいいぞ。いやまあ、イルミネもアンティーカも放クラもみんないいんですが……。

そんなわけであれよあれよとシャニマスにハマっていってしまいました。

アイドルマスターという言葉を「アイドルのマスター(主人)」と捉えたとき、そこにはPとアイドルの上下関係が生まれます。しかし「アイドルがアイドルをマスターする」という意味合いだと捉えるならそれはアイドルを主人公とする物語になります。

シャニマスというゲームではアイドルの個性を、意志を生かすことが最優先されており、常にアイドルが主体となっています。その点においてシャニマスはまさに、「アイドルがアイドルをマスターする」物語としてのアイドルマスターなのではないかと思います。

もしかすると同じくらいキャラの描写に真摯なアイドルマスターもあるのかもしれませんが、少なくとも私は知らないですし、アイマスはギャルゲー的なゲームだと認識している人たちは少なくないように思います。

新規IPを立ち上げることが難しい昨今のコンテンツ業界にあっては、ネームバリューを資本として新しい展開を打ちだしていくのが定石となっています。だからといって既存の顧客にターゲットを絞っていてはジリ貧です。まったくハマると思っていなかったIPにハマるという経験をした私としては、シャニマスのような既存の枠組みを生かしながら新しい価値を示し顧客を獲得するバランス感覚は、1つの理想的なモデルなのではないかと思うのでした。